ベンチャー企業の採用事情
Facebook等のSNSで、ベンチャー企業関連の投稿が増えています。
それらは、ベンチャー企業を経営する経営者による投稿であったり、ベンチャー企業のセミナー関係の投稿であったりします。
さらに、少しでもベンチャー企業に興味がある人に対しては、ベンチャー企業の人材採用関係の広告も配信されていることでしょう。
ベンチャー経営者による投稿は、どのような投稿でも「だから弊社のやっていることは社会的意義が大きい」「大企業では出来ないこと」「働くことが楽しい」をアピールしているように見えます。
裏には「だから弊社に興味を持ち、あわよくば人材を確保したい」というメッセージが隠されています。
また、ベンチャー企業のセミナーは、必ずセミナー主催企業の営業活動が含まれているのであり、加えて人材採用活動を手助けしています。
これはしょうがないことであり、ベンチャー企業からしたら、セミナーを無償で実施する時間が無いのです。
リクルート等のエージェント利用が困難
ベンチャー企業の採用事情は、とにかく困難が多いの一言で全てを言い表すことが出来るといっても過言ではありません。
優秀な人材を確保する為の待遇を提示することも出来なければ、経営層への参画をすぐに促すことも出来ません。
そして、そもそも採用を行っているベンチャー企業を外部にアピールする手段が非常に限られている為、認知を向上させることが出来ません。
リクナビやマイナビに掲載することにより認知度を高めたいと考えても、リクルートやマイナビはそれを商売にしているのであり、掲載料として何十万円を支払わなくてはなりませんし、仲介エージェントサービスを利用しても、手数料として採用した人材の年収の何割かを支払う必要があります。
その為、知人を辿ってマニュアル的に採用活動をせざるを得なくなり、時間を非常に浪費する結果になってしまいます。
現在はメガベンチャーとして有名なサイバーエージェントもDeNAも、社長の執筆した書籍には採用活動の厳しさがひたすらに書かれています(DeNAに関しては、社長がマッキンゼーという誰もが羨むコンサルティングファームのパートナー(経営層)であるにも関わらず、採用には苦労されているのです)。
採用後も企業側の気苦労は続く
採用された人物に対して支払う年収が300万円だとしても、ベンチャー企業からしたら保険や各種経費により、年間500万円を負担しなければなりません。
仮に2名を採用したとしても、年間1,000万円もの出費が発生することになります。資本金1,000万円程度のベンチャー企業が何も出来ずに1年を過ごすと、倒産を迎えることになります。
ベンチャー企業は例外無く少数精鋭が求められることから、1人1人が自らを賄えるくらいの売上(さらには粗利という目標)を達成しなくてはなりません。つまり、企業は、そもそも「費用を払えるかどうか」というリスクを一元的に抱えます。
また、採用し教育した社員を、同業他社から良い条件でヘッドハンティングされてしまうというリスクを多く保有します。
ベンチャー企業では、大企業のように分業されてはいない為、所属している社員が、業務内容の川上から川下を全て習得しなければなりません。
その為、考えられる以上に市場としての人材の価値が高いのです。社員自体がその価値に気付いてしまい、上手く転職活動をすると年収が2倍に跳ね上がることは珍しいことではありません。
その為、企業は採用した後も、多大な気苦労と向かい合わなければなりません。つまり、採用した社員が優秀でないと費用の心配をする必要があり、一方で採用した社員が優秀過ぎると業務が属人化されてしまい「その人なしには企業が成り立たない」とった心配をしなくてはなりません。
テクノロジーが採用問題を解決しつつある
ベンチャー企業が抱える採用に関わる問題の全てではありませんが、Webにおけるテクノロジーが一部の採用問題を解決しつつあります。
これまでマニュアル化されており、仲介エージェントを利用しなくてはならなかった採用事情は、各種Webサービスが無償・安価で提供により、ダイレクトリクルーティングという新しい採用方法が生みだされ、採用担当者は大幅に時間を節約しましたし、人口知能を利用した就職希望者に対して適切な採用情報の提案することにより、より適切な人材に合う確率を高めることに成功しつつあります。
その為、着実にではありますが「待遇ではなく、やりがいを求めて働ける人材」をダイレクトに接することが可能になってきており、人材と企業のミスマッチも減少傾向になっています。
まとめ
ベンチャー企業経営者は、誰しもが「自らの意思に共感し、お金目的ではなく能動的に働ける人材」を求めています。
しかし、社員に満足のいく待遇を与えてやれず「やりがい」を訴え続けることは非常に困難です。
一部では、WEBサービスの発達により問題を解決しつつあります。
しかし、ベンチャー企業を上手く運営する為には、どんなに有能な人であれ、良い人材に巡り合うことが出来るという運に任せなくてはならないところも少なからずあり、非常に厳しい状態が続いています。